Webサイトはインターネットに公開されている以上、常に攻撃のリスクにさらされています。
SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった攻撃は、特別な企業だけでなく、一般的なWebサイトにも日常的に行われています。
こうした攻撃からWebアプリケーションを保護する対策として注目されているのが「WAF(Web Application Firewall)」です。
一方で、「WAFとは何かよくわからない」「本当に必要なのか判断できない」「どのように導入すればよいのかイメージできない」といった声も多く聞かれます。
そこで本記事では、WAFの基本的な仕組みや必要性、導入方法、選定のポイントまでをわかりやすく解説します。
WAFとは
WAF(Web Application Firewall)は、WebサイトやWebアプリケーションを狙った攻撃から保護するセキュリティ対策です。
一般的なファイアウォール(Firewall)が、通信の送信元やポート番号などをもとに「通信の入口」を制御するのに対し、WAFはHTTPリクエストの中身を解析し、「通信内容そのもの」をチェックします。
これにより、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)など、Webの仕組みを悪用した攻撃を検知・防御することが可能です。
WAFの具体的な機能や仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
・WAFの機能ってなに?WAFでできることを知ってみよう!
・もうWAFなんて怖くない!ログから見えてくるWAF解説
・WAFの基本を5分で解説!シグネチャによるトラフィック検査
・WAFで設定可能なIP制限について考えてみたら、注意点が見えた!
「HTTPS通信であれば安全なのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、暗号化された通信であっても攻撃は可能です。
HTTPSとWAFの関係について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
・HTTPSは安全なのに?WAFが必要な理由をわかりやすく解説
・WAFとSSLの関係とは?暗号化通信を検査する仕組みと構成パターンを解説
WAFが必要な理由
インターネット上の通信は、「OSI参照モデル」と呼ばれる7つの層に分けて考えられており、それぞれの層に応じた攻撃手法が存在します。
その中でも、WebアプリケーションやWebサイトがやり取りするアプリケーション層は、特に攻撃の対象となりやすい領域です。近年は、このアプリケーション層を狙った攻撃が多く発生しています。
アプリケーション層には、ユーザーのログイン情報や個人情報など、攻撃者にとって価値の高い情報が多く含まれており、攻撃に成功した場合の影響が大きいことが、その理由の一つです。
実際に、アプリケーション層の代表例であるWebサイトにおいても、多くの脆弱性が報告されています。
IPA(情報処理推進機構)が公表した「ソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出状況[2025年第4四半期(10月~12月)」によると、2004年の受付開始以降、ソフトウェア製品よりもWebサイトに関する届出の方が多いと報告されています。
これは攻撃件数ではなく脆弱性の報告数ですが、Webサイトには多くの脆弱性が存在していることを示しています。
こうした背景から、アプリケーション層の通信内容を解析し、不正なリクエストを検知・遮断できるWAFの導入が企業のセキュリティ対策として重要視されています。
「WAFを導入したいが、設定や運用が難しそう」と感じている方は、以下の記事も参考にしてください。 WAFの設定方法や、手軽に導入できる理由についてわかりやすく解説しています。
・WAFを使ってセキュリティ対策を手軽に始めよう!WAFの設定が簡単な理由もわかりやすく解説
WAFが防ぐ主な攻撃
WAFは、Webアプリケーションの脆弱性を狙ったさまざまな攻撃を検知・防御することができます。ここでは代表的な攻撃手法を紹介します。
SQLインジェクション
データベースへの問い合わせ(SQL)に不正な命令を挿入し、情報を盗み出す攻撃です。
ログイン認証の回避や、顧客情報の漏えいなどにつながる可能性があります。
XSS(クロスサイトスクリプティング)
Webページに悪意のあるスクリプトを埋め込み、ユーザーのブラウザ上で実行させる攻撃です。
セッション情報の盗難や、不正な操作の実行などの被害が発生します。
CSRF(クロスサイトリクエストフォージェリ)
ユーザーがログインしている状態を悪用し、意図しないリクエストを送信させる攻撃です。
例えば、知らないうちに情報変更や送金処理が実行される可能性があります。
ディレクトリトラバーサル
Webサーバー上の公開されていないファイルに不正にアクセスする攻撃です。
設定ファイルや機密情報の漏えいにつながる恐れがあります。
ここで紹介した攻撃は一部に過ぎず、Webアプリケーションを狙った攻撃手法は数多く存在します。
どのような攻撃があるのか全体像を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
・WAFが守る攻撃パターンを一挙にご紹介!こんなに攻撃の種類があるの?
WAFの仕組み
WAFは、Webサイトに送られてくる通信(HTTPリクエスト)や、サーバーからの応答(HTTPレスポンス)を監視し、その内容をもとに不正なアクセスかどうかを判断します。
具体的には、通信の中身に不審な文字列や挙動が含まれていないかをチェックし、攻撃と判断された場合にはそのリクエストを遮断します。
WAFの主な検知方法には、以下のようなものがあります。
シグネチャ型
あらかじめ登録された攻撃パターン(シグネチャ)と通信内容を照合し、一致した場合に攻撃と判断する方法です。
例えば、SQLインジェクションで使用される「UNION SELECT」や、クロスサイトスクリプティング(XSS)で使われる「<script>」といった特定の文字列が含まれている場合に検知されます。
既知の攻撃に対して高い精度で検知できるのが特徴です。
振る舞い検知型(ルール・異常検知)
シグネチャ型が「通信内容に含まれる攻撃パターン」を検知するのに対し、振る舞い検知型は「アクセスの回数や頻度、リクエストの傾向」といった通信の挙動をもとに不審な動きを検知します。
例えば、短時間に同一IPアドレスから大量のリクエストが送信される場合や、通常とは異なる頻度で特定のURLにアクセスが集中する場合など、あらかじめ設定されたルールに基づいて不正な挙動として検知されます。
また、通信ログをもとに不審な傾向を分析し、ルールを追加・調整することも可能です。未知の攻撃にも対応できる点が特徴です。
なお、近年のWAFでは、機械学習(AI)を活用した検知機能も導入されています。
従来は人が設定したルールやシグネチャをもとに検知していましたが、AIは通常のアクセス傾向を学習し、異常な挙動を自動的に検知することが可能です。
ただし、AIだけで完全に防御できるわけではなく、シグネチャやルールと組み合わせて利用されるのが一般的です。
WAFの主な機能
WAFには、通信を監視・制御するために以下のような機能があります。
通信のフィルタリング
通信内容をもとに、許可・拒否の判断を行います。
不正リクエストの遮断
攻撃と判断されたリクエストをブロックし、Webアプリケーションへの到達を防ぎます。
ログの取得
アクセス内容や遮断した通信の履歴を記録し、後から分析できるようにします。
ルール設定
特定の条件に応じて通信を制御できるように、独自のルールを設定できます。
WAFの種類
WAFには、導入方法や提供形態の違いによって、主に「クラウド型」「アプライアンス型」「ソフトウェア型」の3つの種類があります。それぞれの特徴を説明します。
クラウド型WAF
クラウド上で提供されるWAFサービスで、インターネット経由で導入できるのが特徴です。
初期設定が比較的簡単で、短期間で導入できるため、手軽にセキュリティ対策を始めたい場合に適しています。
アプライアンス型WAF
専用のハードウェア機器として提供されるWAFで、自社ネットワーク内に設置して利用します。
柔軟なカスタマイズが可能で高い制御性がありますが、導入コストや運用負荷が高くなる傾向があります。
ソフトウェア型WAF
サーバーにソフトウェアとしてインストールして利用するWAFです。
既存環境に組み込みやすく柔軟に設定できますが、運用や管理は自社で行う必要があります。
それぞれのWAFについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
クラウド型WAFの仕組みや特徴について詳しく知りたい方はこちら
・クラウドWAFとは?入門編として製品と仕組みを理解してみよう
WAFサービスの全体像や導入前に確認すべきポイントを知りたい方はこちら
・WAFサービスとは?導入に向けて確認すべきポイントがあるのです!
複数のWAF製品を比較して検討したい方はこちら
・WAF 10製品を徹底比較 クラウドWAF料金やオープンソース(OSS)も解説!世の中にこんなにあるの?がわかります
導入方法や種類ごとの違いを詳しく知りたい方はこちら
・WAF導入方法とは?アプライアンス型、ソフトウェア型、クラウド型を一挙に解説
WAFと他セキュリティの違い
WAFはWebアプリケーションを保護するためのセキュリティ対策ですが、ファイアウォール(FW)やIDS/IPSといった他のセキュリティ製品とは役割が異なります。ここでは、それぞれの違いについて解説します。
FWとの違い
ファイアウォール(FW)は、通信の送信元IPアドレスやポート番号などをもとに「通信の入口」を制御する仕組みです。
主にネットワークレベルでのアクセス制御を行い、不正な通信の侵入を防ぎます。
一方、WAFはHTTP通信の中身を解析し、「通信内容そのもの」をチェックします。
そのため、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃にも対応することができます。
IDS/IPSとの違い
IDS(侵入検知システム)やIPS(侵入防止システム)は、ネットワーク上の通信を監視し、不審な挙動や既知の攻撃パターンを検知する仕組みです。IPSは検知に加えて、不正な通信を自動的に遮断する機能も持っています。
一方で、IDS/IPSは主にネットワーク全体のトラフィックを対象としており、HTTPリクエストのパラメータや入力内容といった、Webアプリケーションの細かい通信内容までは十分に解析できない場合があります。
これに対してWAFは、Webアプリケーションに特化し、URLやフォーム入力などのHTTP通信の中身を詳細に検査します。
そのため、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)など、アプリケーションの脆弱性を悪用する攻撃への対策に強みがあります。
CDNとの違い
CDNはコンテンツ配信を高速化する仕組みであり、セキュリティを主目的としたWAFとは役割が異なります。CDNとWAFの違いや使い分けについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
・CDNとWAFとの違いとは?どっちが必要?優先なの?ズバリ答えます
WAFの導入方法
WAFの導入方法は提供形態によって異なります。大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」の2つがあり、それぞれ説明します。
クラウドWAF
クラウドWAFは、クラウド上で提供されるサービスを利用する形で導入する方法です。自社で機器を用意する必要がなく、設定も比較的シンプルなため、短期間で導入できるのが特徴です。また、運用やアップデートをベンダーに任せられるケースが多く、セキュリティ運用の負担を軽減できる点もメリットです。
初めてWAFを導入する場合や、スピーディーに対策を行いたい場合に適しています。
オンプレWAF
オンプレミス型WAFは、自社環境に機器やソフトウェアを設置して運用する方法です。
ネットワーク構成やセキュリティポリシーに合わせて細かく設定できるため、高い柔軟性を持ちます。
一方で、機器の購入や構築、運用管理を自社で行う必要があり、コストや運用負荷が高くなる傾向があります。
高度なカスタマイズや厳格な管理が求められる環境に適しています。
また、クラウド環境や構成によっては、上記で説明した導入方法とは異なる場合があります。
AWSやAzure環境での導入方法や、ネイキッドドメインでの構成について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
・AWSやAzureのクラウド環境にWAFを導入する方法とは?
・ネイキッドドメインを使用するサイトへWAFを導入するには?
WAF選定のポイント
WAFを導入する際は、単に機能の多さだけでなく、自社の環境や運用体制に適した製品を選ぶことが重要です。ここでは、選定時に確認しておきたい主なポイントを紹介します。
対応している攻撃
WAFによって対応できる攻撃の種類や検知精度は異なります。
SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などの基本的な攻撃に加え、自社のサービスで想定されるリスクに対応できるかを確認することが重要です。
また、シグネチャの更新頻度や、新たな攻撃への対応力も選定時のポイントとなります。
運用体制
WAFは導入して終わりではなく、ログの確認やルールの調整など継続的な運用が必要です。
そのため、自社で運用するのか、ベンダーに任せるのかを事前に検討しておくことが重要です。
自社にセキュリティの専門知識やリソースが不足している場合は、運用支援サービスやマネージドWAFを選択することで、負担を軽減できます。
コスト
WAFの導入には、初期費用や月額費用、運用コストなどがかかります。
クラウド型は初期費用を抑えやすい一方で、継続的な利用料金が発生します。オンプレミス型は初期投資が大きくなりがちですが、長期的にはコスト構造が異なる場合もあります。
単純な価格だけでなく、運用負荷やサポート体制も含めて総合的に判断することが重要です。
誤検知の調整性
WAFでは、正常な通信を誤って攻撃と判断してしまう「誤検知(False Positive)」が発生することがあります。
誤検知が多いと、正規ユーザーのアクセスがブロックされるなど、サービスへの影響が出る可能性があります。
そのため、ルールの細かな調整が可能か、チューニングのしやすさやサポート体制が整っているかも重要な選定ポイントとなります。
環境に応じたWAFの活用
WAFは、すべてのWebサイトに同じように適用するものではなく、運用するサービスや環境によって重視すべきポイントが異なります。ここでは代表的な活用シーンを紹介します。
ECサイト → 個人情報保護
ECサイトでは、ユーザーの個人情報やクレジットカード情報など、重要なデータを取り扱います。
そのため、SQLインジェクションなどの攻撃による情報漏えいが大きなリスクとなります。
WAFを導入することで、不正なリクエストを検知・遮断し、顧客情報の漏えいを防ぐことができます。
特に、決済機能やログイン機能など、重要な処理を保護する上で有効です。
コーポレートサイト → 改ざん防止
コーポレートサイトでは、企業の信頼性に直結する情報が公開されています。
攻撃によってサイトが改ざんされると、ブランドイメージの低下や信用失墜につながる可能性があります。
WAFを活用することで、不正なスクリプトの実行や不審なリクエストを防ぎ、サイト改ざんのリスクを低減できます。
広く公開されているサイトほど、基本的な防御対策として有効です。
SaaS → API保護
SaaSサービスでは、APIを通じてデータのやり取りを行うケースが多く、APIを狙った攻撃が増加しています。不正なリクエストによるデータの取得や、サービスの悪用といったリスクが存在します。
WAFを導入することで、APIへの不正アクセスや異常なリクエストを検知・遮断し、サービスの安全性を高めることができます。
特に外部連携が多いサービスでは重要な対策となります。また、開発環境やシステム構成に応じたWAFの活用も重要です。
PHPシステムにおけるWAFの活用や、DevSecOpsの観点からのセキュリティ対策について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
・PHPシステムのセキュリティ対策としてのWAF 何に注意すればいいの?
・Dev Sec Opsの考え方とWAFについて
WAF導入を検討している方へ
「WAFを導入したいが、どの製品を選べばよいかわからない」
「自社に本当にWAFが必要なのか判断できない」
このような悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
WAFは製品や導入方法によって特徴が大きく異なるため、自社のシステム環境や運用体制に適したものを選定することが重要です。
しかし、攻撃リスクや必要な対策を正しく把握しないまま導入してしまうと、十分な効果が得られない可能性もあります。
そのため、専門家の視点から現状のリスクを整理し、最適な対策を検討することが重要です。
当社では、WAFの導入支援や運用サポートを通じて、お客様の環境に適したセキュリティ対策をご提案しています。
「まずは話を聞いてみたい」という方も、お気軽にご相談ください。