情報システムへの依存度が高まる昨今、もはやサイバー攻撃は大企業だけの脅威ではありません。機密情報の漏えいやサービス停止など、ひとたび攻撃を受けると、業務の継続や信用に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。
こうしたリスクを未然に防ぐために欠かせないのが「脆弱性診断」です。とはいえ、「脆弱性診断はどのような種類があるのか」「どのように進めれば良いのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
そこで本記事では、脆弱性診断の基本や種類、実施の流れやポイントをまとめて解説します。システムを安全に運用するための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
脆弱性診断とは
脆弱性診断とは、ソフトウェアが抱える脆弱性(セキュリティ上の弱点)を見つけ出す作業のことです。システムやWebアプリをセキュリティの観点から精査し、外部からの攻撃や侵入のリスクを特定することで、精度の高いセキュリティ対策を可能にします。
脆弱性診断の重要性
脆弱性診断は企業規模を問わず、あらゆる企業にとって欠かせないセキュリティ対策の1つです。ここでは、脆弱性診断の重要性について、次の2点に分けて解説します。
- 脆弱性は多大な損害をもたらす
- 新たな脆弱性は日々生まれている
脆弱性は多大な損害をもたらす
気付かずに放置していた脆弱性を攻撃者に突かれれば、サイバー攻撃の成功を許すことになるでしょう。そうなれば、情報漏えいやシステム停止などの問題が生じ、多大な損害を受ける恐れがあります。
情報処理推進機構(IPA)の「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」によると、中小企業でもサイバー攻撃によって1,000万円以上の損害を受けたケースが報告されています。
昨今では、データを人質に取って身代金を要求する「ランサムウェア」など、間接的な人件費にとどまらない被害をもたらす脅威も増えています。脆弱性を放置すれば、このような多額の被害や、情報漏えいなどによる企業の評判低下が経営への致命的なダメージとなりかねません。
特に、攻撃の被害を受けてからの復旧には多くの時間とコストがかかります。こうしたリスクを考えると、事前の脆弱性診断によって弱点を洗い出し、早期に対策を講じることは、費用対効果の高いセキュリティ対策といえます。
新たな脆弱性は日々生まれている
システムの脆弱性はゼロにはなり得ません。新たな脆弱性が日々、生まれているためです。
攻撃者は常に新しい攻撃手法を考え出し、システムやWebアプリへの侵入・攻撃を試みています。その結果、昨日までは安全と思われていたセキュリティ対策でも、最新の攻撃に対しては脆弱になるケースも少なくありません。
新たな脆弱性を放置すれば、攻撃を受けやすい状態が続き、情報漏えいやシステム障害などの被害につながります。こうした事態を防ぐためには、定期的に脆弱性を洗い出し、素早く対処することが重要です。
脆弱性診断の手法
脆弱性診断の主な方法として、「手動による診断」と「ツールを用いた診断」の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
手動による診断
手動による診断は、セキュリティの専門家が自らの知識や経験にもとづき、手作業で脆弱性を探す方法です。システムやWebアプリの設定、ソースコード、構成情報などを1つずつ精査し、脆弱性を見つけ出します。
手動による診断では、特定の操作手順やユーザー権限の組み合わせでのみ現れる脆弱性など、ツールでは見落としがちな脆弱性も検出可能です。
たとえば、正規の購入画面を介さず注文データを直接送信し、不正に割引を適用させるような攻撃パターンが挙げられます。システム上はエラーにならないため、ツールによっては検出されないでしょう。しかし、専門家であれば「この手順で割引が適用されるのは不自然」とビジネスロジックと照らして気づけるため、こうした矛盾を検出できます。
ただし、専門性の高いスキルが要求されるため、診断には時間とコストがかかる傾向があります。また、診断の精度は診断実施者のスキルに依存するため、人材やサービスの選定が重要です。
ツールを用いた診断
ツールを用いた診断は、専用の脆弱性診断スキャナを使用して自動的に脆弱性を検出する手法です。
具体的な検出方法はツールの実装によって異なりますが、一般的には既知の脆弱性シグネチャやパターンを対象システムに対して照合し、一致する箇所を特定するなど、シグネチャベースの検査やルールベースの技術的チェックが中心となります。
ツールによる診断は、セキュリティの高度な知識がなくても実施しやすく、短時間で効率的な診断が可能です。その一方で、複雑な条件が絡む脆弱性パターンなどを見逃してしまうリスクがあります。ツールは既知の脆弱性パターンに基づく検査が中心のため、システム独自のルールにもとづく設定ミスは検出が困難です。
なお、脆弱性診断ツールによって料金は大きく変わります。月額無料~数千円程度で利用できるツールもあれば、月額十万円程度かかるツールもあります。高額な料金設定のツールだと、継続的に脆弱性診断を行っていくには負担が大きいでしょう。少ない運用コストで脆弱性診断を行いたい企業には「サイバー攻撃自動診断」がおすすめです。
サイバー攻撃自動診断は、いつでも無料でWebサイトの脆弱性診断が行えます。まずは自社サイトの状態を手軽に確認したい方は、ぜひご活用ください。
脆弱性診断の実施ステップ
脆弱性診断を効果的に行うためには、正しいステップに沿って進めていくことが大切です。ここからは、脆弱性診断の実施ステップを見ていきましょう。
- ステップ1:事前準備
- ステップ2:診断実施
- ステップ3:結果分析・報告
ステップ1:事前準備
まずは、診断の具体的な計画を立てるところから始めます。診断の対象範囲(システムやWebページ)や実施方法(担当する専門家や使用するツール)を決め、具体的なスケジュールを立てましょう。Webアプリケーション診断における具体的な準備項目と、その具体例や日数の目安を下表にまとめました。
| 準備項目 | 具体例 | 日数の目安 |
|---|---|---|
| 診断対象の調査・特定 | ・対象となるURL、ドメイン、IPアドレスなど ・画面遷移図、機能一覧(ログイン、決済、問い合わせなど) ・システムの技術仕様(フレームワーク、MWのバージョンなど) | 1~3日 |
| 実施環境の調査・整備 | ・検証環境(ステージング)の用意 ・診断用アカウント(一般権限、管理者権限など)の発行 ・通信許可設定(WAFの除外やIPアドレスのホワイトリスト登録) | 5~10日 |
| ルール・基準の策定 | ・ブラックボックス(情報なし)か、ホワイト/グレーボックス(仕様書・コードあり)か ・発見された脆弱性のランク付け基準(Critical/High/Medium/Lowなど) ・ランクごとの修正期限 ・リリース判断基準(例:High以上はリリース不可) ・緊急時の連絡フロー(サーバダウン時などの連絡先) | 1~3日 |
| 診断手法・ルールの策定 | ・リモート診断 or オンサイト診断 ・診断データの取り扱い(破壊的なテストの可否など) ・緊急時の連絡体制 | 1~2日 |
| スケジュールの立案・合意 | ・診断実施期間(開始〜終了日時) ・報告書の提出日、報告会の日程 ・診断中のシステム停止の有無やパフォーマンス低下の許容範囲 ・事業責任者からの実施承認 | 1~3日 |
| 報告フロー・報告内容の整理 | ・報告対象者(経営層、開発チームなど)の明確化 ・中間報告の要否、最終報告のタイミングの設定 ・報告会の形式(オンライン/対面)と参加者の想定 | 1~2日 |
外部の脆弱性診断サービスを利用しない場合は、専門家の確保やツールの導入・設定もあらかじめ行う必要があります。本番環境に対して診断を行う場合は、業務への影響を考慮したスケジュール設計が欠かせません。
ステップ2:診断実施
次に、事前準備で決めた計画に従い、診断を実施します。手動診断では専門家が手作業でシステムやWebページを精査し、脆弱性を探します。ツールを用いた診断では、脆弱性診断ツールを設定に沿って実行します。
診断の過程や結果は詳細に記録し、後の結果分析に備えます。診断の内容によってはシステムに高い負荷がかかる場合もあるため、注意が必要です。サービスの稼働に影響が出ないよう、監視体制を整えて進めましょう。
ステップ3:結果分析・報告
診断の実施後は、発見された脆弱性を整理・分析し、報告書にまとめます。見つかった脆弱性がどれほど深刻なのか、どの程度緊急に対応すべきか、といったリスク(危険度)も評価します。
ツールによる診断であれば、スキャン完了後、即座にスキャナのレポートを出力できます。ただし、診断実施者がスキャン結果を精査し、重点箇所の分析や対策方針を含めた報告書として取りまとめる場合は、提出までに数日かかることが一般的です。いずれにしても、その結果の詳細な分析や、診断結果を踏まえた対策方針の検討は、自社で行わなければなりません。
専門家による脆弱性診断サービスであれば、診断結果や検出された脆弱性のリスク評価を踏まえた具体的な対策の提案まで受けられます。自社で診断の実施や結果の分析を行うのが難しい場合は、ソフトウェア品質の専門家であるバルテス株式会社が提供する脆弱性診断サービスを活用するのがおすすめです。
脆弱性診断を成功させるためのポイント
ここでは、診断を成功させるために押さえておきたい3つのポイントを解説します。
定期的に実施する
脆弱性診断は、一度実施しただけで完了するものではありません。前述のように、新たな脆弱性は日々生まれています。
また、システム自体も機能追加や改修によって変化しています。以前は問題なかった箇所が、変更によって新たな脆弱性を生むケースも少なくありません。
そのため、新たな脆弱性に素早く対処できるよう、脆弱性診断は定期的に実施することが大切です。
セキュリティの専門家を確保する
手動による診断や結果の詳細な分析には、高度なセキュリティの知識が求められます。ツールによる診断だけでは検出が困難な、複雑なロジックやビジネスロジックに起因する脆弱性、設定不備なども多いため、専門家による判断が不可欠です。
しかし、自社で脆弱性診断の専門家を育成・確保するには、教育や採用に多大なコストと時間がかかります。そのため、信頼性の高い外部の脆弱性診断サービスを活用することが、現実的かつ効果的な選択肢となります。
熟練した専門家による診断であれば、ツールでは見落としやすい脆弱性を正確に特定し、リスク評価や具体的な修正方針の提案を受けることが可能です。
診断結果をセキュリティ対策につなげる
重要なのは、脆弱性診断で検出された脆弱性を放置しないことです。脆弱性診断は、あくまでシステムの状態を把握するための「健康診断」にすぎません。診断を実施して満足せず、実際のセキュリティ対策につなげるべきです。
脆弱性があるプログラムの改修や設定変更、更新プログラムの適用など、具体的な対応策を講じましょう。とはいえ、システムの改修には時間とコストがかかる場合が多く、すぐに対応できないケースも珍しくありません。そのような「改修までの無防備な期間」を埋める即効性のある対策として、WAF(Web Application Firewall)の導入が有効です。
現在、バルテスでは脆弱性診断とWAFをセットで導入できる「サイバーセキュリティ+1プラン」を提供しています。診断をお申し込みのお客様にクラウド型WAF「PrimeWAF」を3か月間無料で提供しており、診断から防御までをワンストップで実現可能です。診断後の対策に不安がある方は、ぜひご活用ください。
まとめ
本記事では、脆弱性診断の概要から、診断の種類・実施ステップ・ポイントまでお伝えしました。
脆弱性診断は、システムやWebサイトをサイバー攻撃の被害から守るために欠かせないセキュリティ対策と言えます。診断結果を単なる報告で終わらせず、リスク分析を行ったうえで、適切な修正やセキュリティコントロールの強化につなげることが重要です。また、専門家の知見を取り入れながら、定期的に診断を実施し、継続的なセキュリティ改善を行うことが望まれます。
また、手動による診断・ツールを用いた診断には、異なるメリット・デメリットがあります。どちらが絶対的に優れているとは一概に言えません。弊社の脆弱性診断サービスのように、両者を組み合わせて信頼性と効率性を両立させる方法も効果的です。
当サイトではWebサイト、モバイル、IoTへの脆弱性のリスクを考えている方や、サイバー攻撃の脅威から守るWAFやセキュリティ診断に興味がある方へ、ダウンロード資料をご用意しております。ぜひ資料をダウンロードいただき、ご活用ください。