情報漏えいやサイバー攻撃のリスクが高まる中、あらゆる企業にとってセキュリティ対策は欠かせない課題といえます。セキュリティ対策における指針として、重要性が高まっているのが「セキュリティガイドライン」です。
しかし、セキュリティガイドラインの重要性を漠然と感じていても、「何を参照すれば良いのか分からない」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、セキュリティガイドラインとは何か、基本事項をまとめてお伝えします。汎用的に活用できるガイドラインや、業界ごとの主要なガイドラインもご紹介いたします。
セキュリティガイドラインとは
セキュリティガイドラインとは、企業が適切なセキュリティ対策を実施するためのノウハウを体系的に整理したものです。セキュリティ対策の指針やベストプラクティスなどが集約されており、企業にとって重要な道標となります。
業界や目的に応じて、さまざまな種類のセキュリティガイドラインが存在します。企業に合ったセキュリティガイドラインを選定し、組織内で適切に取り入れることが大切です。
セキュリティガイドラインを選定する際には、次のような観点で自社に合っているか判断しましょう。
- 自社の業界や分野に特化した内容かどうか
- 法令や業界ルールへの対応が盛り込まれているか
- 最新の脅威動向や技術に基づいてアップデートされているか
適切なセキュリティガイドラインを選び、組織内に取り入れることで、セキュリティ対策を効果的・効率的に講じることが可能です。
セキュリティガイドラインの重要性
昨今の日本において、セキュリティガイドラインはますます重要となっています。セキュリティガイドラインの重要性について再確認しておきましょう。
増加するサイバー攻撃への対策
昨今の日本ではサイバー攻撃が増加しつつあり、あらゆる企業がそのリスクにさらされています。サイバー攻撃への対策を進めるうえで、セキュリティガイドラインは非常に重要な存在です。
総務省「令和7年版 情報通信白書」によると、Web上で確認されたサイバー攻撃の疑いがある通信数は2015年ごろから増加傾向にあります。2024年には、2015年と比べて10倍以上にも増加しているのです。

出典:令和7年版 情報通信白書
サイバー攻撃を許すことになれば、情報漏えいやランサムウェア(身代金要求型マルウェア)による業務停止や身代金要求、DoS攻撃によるサービス停止など、さまざまな被害が懸念されます。そして、その危険性は年々高まっているでしょう。そのため、企業にとってセキュリティガイドラインに基づいた適切な対策を講じることが、ますます重要となっています。
企業がセキュリティガイドラインを活用するメリット
企業がセキュリティガイドラインを活用することには、主に2つのメリットがあります。
組織全体のセキュリティ方針を明確化できる
セキュリティガイドラインを活用すれば、組織全体のセキュリティ方針を明確化できます。セキュリティに関する方針が曖昧なままでは、セキュリティへの対応が部署や個人の裁量に委ねられてしまい、各所でリスクが顕在化しかねません。
その点、セキュリティガイドラインは組織全体のセキュリティに関する明確な方針を与えてくれます。そのセキュリティ方針に沿って策定したガイドラインやマニュアルをすべての部署や個人に周知し、かつ遵守を徹底することで、社員全員が共通のセキュリティルールに基づいて業務を遂行できるようになるでしょう。
セキュリティ対策の抜け漏れを防げる
セキュリティガイドラインを活用することで、セキュリティ対策の抜け漏れを防げます。
現代のセキュリティ対策は技術的な対策だけでなく、人的・物理的な対策も含めた総合的な取り組みが必要です。しかし、その全てを個々の判断に委ねると、重要な対策が見落とされるリスクが高まります。
その点、セキュリティガイドラインには組織や個人が講じるべき対策が体系的に整理されており、見落としやすい対策項目も網羅されています。また、多くのガイドラインは定期的にアップデートされるため、最新の脅威やセキュリティ動向を取り込むことも可能です。
セキュリティガイドラインを適切に活用することで、セキュリティ対策の抜け漏れを防ぎ、組織全体のセキュリティレベルを向上できるでしょう。
汎用性が高いセキュリティガイドライン
セキュリティガイドラインは多数ありますが、さまざまな業界や分野において有用なものも存在します。ここでは、汎用性が高いセキュリティガイドラインを3つご紹介します。
サイバーセキュリティ経営ガイドライン(経産省)
経済産業省が公表している、経営者向けのセキュリティガイドラインです。経営者が主体となって、組織全体に適切なセキュリティ対策を徹底するための指針が体系的にまとめられています。大企業から中小企業まで、幅広い企業にとって有用なガイドラインです。
テレワークセキュリティガイドライン(総務省)
総務省が公表している、テレワーク導入企業向けのセキュリティガイドラインです。コロナ禍を経てテレワークが普及し、新たなセキュリティリスクが顕在化しました。テレワークにおいて直面する脅威から企業を確実に守るために、このガイドラインを活用しましょう。
中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(IPA)
IPA(情報処理推進機構)が公表している、中小企業向けのセキュリティガイドラインです。中小企業の経営者が推進すべき、セキュリティ対策の取り組みに関する指針が体系的にまとめられています。日本企業の99%以上は中小企業であるため、このガイドラインはほとんどの企業にとって有用です。
業界別・セキュリティガイドライン一覧
業界別のセキュリティガイドラインを活用すれば、業界標準に準拠したセキュリティ対策を取り入れることが可能です。ここでは、2025年2月時点における業界別の主要なセキュリティガイドラインを一覧表にまとめました。一覧表は随時更新される場合があります。
ご自身の業界・分野に合ったセキュリティガイドラインの活用を検討してみると良いでしょう。なお、関連記事もあわせて参考にしてください。
また、世界には日本よりもセキュリティ対策が進んでいる国や組織も存在します。必要に応じて、海外のセキュリティガイドラインにも目を向けることで、より高水準なセキュリティ対策のヒントが得られるでしょう。
セキュリティガイドラインを活用する際のポイント
最後に、セキュリティガイドラインを活用する際のポイント4つを押さえておきましょう。
組織や業界にとって最適なガイドラインを選定する
組織や業界にとって最適なセキュリティガイドラインを選定しましょう。セキュリティリスクは組織や業界ごとに変わるため、1つのガイドラインで必要な対策項目を網羅できるわけではありません。組織や業界に合ったガイドラインを選ぶことで、より網羅性を高められるでしょう。場合によっては、複数のガイドラインを組み合わせることも検討が必要です。
組織の実情に合わせてカスタマイズする
セキュリティガイドラインは、組織の実情に合わせてカスタマイズしましょう。ガイドラインは、あくまで一般的な指針であり、すべての組織にそのまま適用できるとは限りません。自社の状況やポリシーなどによっては、規定された対策項目を実施できないケースも考えられます。
そのような場合には、実施しないことのリスクを洗い出し、それを組織として許容できるか評価することが重要です。許容できる場合は、組織の規模や業務フローに合わせ、必要な部分を調整して運用しましょう。許容できない場合は、代替策・緩和策の実施やリスク移転も検討する必要があります。
全社的にガイドラインへの理解と遵守を促進する
全社的にセキュリティガイドラインへの理解と遵守を促進しましょう。セキュリティガイドラインを策定しただけでは、効果は期待できません。経営陣だけでなく全社員がガイドラインの内容を理解し、日々の業務で遵守することが大切です。そのため、定期的なセキュリティ教育を実施し、全社的な理解促進を図りましょう。
定期的に取り組み状況を評価・更新する
セキュリティガイドラインに沿った取り組み状況は、定期的に評価・更新しましょう。新たな脅威は次々と登場するため、古いセキュリティ対策では不十分となることがあります。新たな脅威に備えるため、実施している取り組みに問題がないか評価し、必要に応じてアップデートしていくことが大切です。
具体的には、ガイドラインに定められた脆弱性診断の実施状況、検出された脆弱性への対応状況、セキュリティ製品の導入・運用状況といった項目を評価します。必要であれば、外部のセキュリティ監査機関に依頼するのも良いでしょう。
まとめ
本記事では、セキュリティガイドラインの重要性や活用のポイントについてお伝えしました。
セキュリティガイドラインとは、適切なセキュリティ対策を実施するためのノウハウを体系的に整理したものです。適切なセキュリティガイドラインを活用すれば、効果的・効率的にセキュリティ対策を実施できます。
さまざまな種類のセキュリティガイドラインから、企業にとって最適なものを選定することが大切です。セキュリティガイドラインを活用する際には、今回の内容をぜひ参考にしてください。
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